2010年8月28日土曜日

約(つづま)やかな通路

西島三重子 一瞬の夏

丸太が浮かび
魚(うお)が白い腹を見せる
見知らぬ街の見慣れた疏水(そすい)

短い夜が始まり
いつの間に夏が往き
見せかけの家の見捨てた壁
痞(つか)えた息が淀む

君のいない昼食に
片肘付いて
みじめな空腹をコップに入れて呑み込む

手付かずの布
束ねた糸
裂いて紡ぐ我が衣
埃もなく貧しい

逃げ帰る君の背
約(つづま)やかな通路
損なわれた爪
枯れた野の摘み草

20:11 2010/08/28 土曜日