- Within Temptation (Lyrics) -The Truth Beneath The Rose

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涸れた倦み

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    5 年前

涸れた倦み

2011年11月28日月曜日

愛されたかった

過ぎた日
過ぎた時
過ぎた人
私はひとり立っていた
青い広々とした原っぱ
何処かには行けるはずの道
光りを失った砂の上
私は見ていた私を
私は話さなかった私を
貴方はいた私の目の前に
私はいた貴方の目の前に
貴方を見ていた
秋が過ぎ
冬が留まり
春が巡る
愛されたかった

灰色の空
退屈な街
遠い日
私はひとり見ていた
日を浴びて窓辺で
雨に濡れた鉄棒を
凍った路上の葉のない樹
私は憎んでいた私を
私は忘れられなかった私を
貴方は捨てられなかった貴方を
貴方を見ていた
昨日が溜(た)まり
今日が暮れて
明日が遠い
愛されたかった

往く人
移ろう季節
褪せる景色
私はひとり立っていた
道は途切れ
小さな海が切り取られ
飛ぶ鳥は時空を失う
私は生きようとした私を
貴方は生きようとした貴方を
二人は限られていた
二人は定められていた
日は始まり
日は終わり
人は水の辺(ほとり)
愛されたかった

蓄えられた光
自由な線
仮初めの岸
私はひとり見ていた
波乱のない劇を
贈られるばらを
石ころのような晩に鞄に折り畳む手足
私は逃げようとした私から
貴方は見つめていた私を
貴方は逃げようとした私から
私は明らめていた貴方を
あらゆることを求め
あらゆることがいやになる
その昔
終わり頃(ころ)
いろいろの人
愛されたかった

似た扉
似た空
似た話
私はひとり立っていた
一枚の皮
前に刻んだ荒くぼんやりとした人のカタチ
重ねることが出来るとすればおもちゃのような性器
どのように近付いても閉じる人の扉
知られないように隠されている人の顔
私は恥ずかしかった私が
私は捨てたかった私を
貴方は見ていた私を
口にせずに見たい
言葉にせずに聞きたい
それは
朝に遠く
夜に遠く
愛されたかった

私の歪み
部屋の歪み
時代は緩(ゆる)やかに曲がる
私はひとり見ていた
或る場所に向かういのち
吊れる傷
行っては戻り
骨に往き着く
私は懼(おそ)れていた私を
私は懼れていた貴方を
貴方が見ていた私
西の空が赤らむ
炎を切って
鳥を放してやる
愛されたかった

東に岐路
西に心を残し
行く道に風は吹く
私はひとり立っていた
失って塗った色
容易く罪を作る慣わし
私は得ようとした楽しい束を
貴方は守ろうとした石の沈黙を
私は逃げられなかった
貴方は逃げなかった
私は見ていた貴方を
此処の景色
彼方此方(あちこち)の人
息の一切
愛されたかった

懐かしく
離れ難(がた)く
燻(くすぶ)る
私はひとり見ていた
必然に隋(したが)い
偶然に結(ゆ)わえられる
悲しい無駄をして
悲しい目の落ちる場所に行く
貴方は変わらなかった
私は幻に倣った
戯れに空いた席を探す
貴方は見ていた私を
鎖(とざ)されて
灰の中
夢のような
愛されたかった

ひと切れの雲
清らかな水
草草(そうそう)
私はひとり立っていた
志を潜め思いに沈む
誰そ彼(たそかれ)
器に溢れる誇り
誰かはいた私の指に触れて
誰かはいた私の影に重なって
私はいたひとり立っていた
貴方は見ていた私を
日に干して
穴に埋めて
寝床に就く
愛されたかった

平らかな日
遠目に人を見る
遠く人の声を聞く
私が私でない
貴方が貴方でない
穹谷(きゅうこく)の霧に包まれ
踏み行うべき道を外れる
朝に夕に私に与えられていた
朝に夕に貴方に恵まれていた
私はなぞりたかった男という形式を
貴方は囚われていた女という輪郭に
ふたりは見ていたいのちを
陽炎(かげろう)
蜉蝣(かげろう)
めざめて
ゆれて
愛されたかった

走るように今日
阻む明日
散ずる然り
私はひとり見ていた
滾滾(こんこん)と湧き出る念(おも)い
たとえ足りない夜も
たとえ繋がれた秋(とき)も
片時熱に振れる目盛り
私は傾斜して行った貴方に
貴方は慈しんだ私を
私は貴方を見ていた
貴方は私を見ていた
今宵
私を連れ去り
縺もつ)れる舌
愛されたかった

条理の北の果て
恋ごころ
秋の霜
私はひとり立っていた
貴方はひとり立っていた
打ち明ける人の外
覚悟が奪い去る限り
方図もなく野辺をうずめる半ば美しい花
手を伸ばすとみな 影
貴方は許した私を
私は許された何もかも
私は許せなかった私を
私は許せなかった貴方を
許せなかった何ひとつ
貴方は見ていた私を
丸めて夕べ
粗末なこと葉
はらはら
愛されたかった

再び帰らない逕(みち)
魂(こん)は天に還(かえ)り
魄はく)は地に眠る
私はひとり見ていた
傾いた日の向こう側
白い月 白い水を探す
潔く尊く
泬泬(けつけつ)たる食卓
無念の燭(しょく)を頂く
私は背いた貴方に
私は背いた寄る辺なさに
私は見た貴方を
貴方は見ていた私を
忘れて
今は昔
忘れて
愛されたかった

火雲
日を尽くして
野を焼く
私はひとり立っていた
時を禁(と)め
時を読まない
進み 戻る
迷いもかすれ
広がる青い海
なれた仕方
狂わない針
己を空しくして与える人
貴方のこころに叶いたい
貴方は哀れんだ私を
私は安んじる私を
貴方は見ていた私を
世を避けて
あの角
この角
愛されたかった

巡る赤心の章
心のあるところ
風冴ゆる
私はひとり見ていた
晴れた日
空空寂寂
刺草に触れ自らを投げ隠して
文机に向かう
わずかな言葉で成る感傷
人の傍ら
悲しい振りをして
それっきり
貴方は答えてくれない
私は答えを求めない
貴方は見ていた私を
果たして
この安らぎ
賤(いや)しく
愛されたかった

旅の憂い
花の姿
使いの鳥
私はひとり立っていた
明け残る海に薄氷を踏む
遥かなる岸
捉え難く
言い繕う芝居の終わり
転がる声 絡まる君
敢えて意に染まない独白の喉を切る
私を計るには自由の器を
世を図るには孤高の鬣(たてがみ)を
貴方は似ていたその人に
私は似ていたその人に
貴方は代わりに私を
私は代わりに貴方を
そうだとしても
捕えられて
囚われて
獣(けだもの)の檻(おり)
愛されたかった

惰性の力
支配を好み
深く心酔し
私はひとり見ていた
恥じて赤らむ空を
行き悩む雲を
ゆるやかに斜めに傾く陽
綿布の色も衰え
こころに滲みる恋文
私は身につけた諦めを
貴方は隠さなかった躊躇いを
私は見ていた貴方を
貴方は見ていた私を
こんなに
一面に
裂けた羽
愛されたかった

蒼く渇いた
日の連なり
廻り合わせ
足を爪立てて見る
残りの一刻一刻
私はひとり立っていた
臂(ひじ)に刻する
文字それぞれ
思いそれぞれ
嘘のように滅んで往く人
向かい合い互いの目を以って確かめても
声の限りに叫んでも
花心
花言
花の如し
私は葬る貴方を
私は葬る貴方と住んだ家を
私は見ていた貴方を
貴方は忘れてしまった私を
然(そ)うして
もう一度
似たような
愛されたかった

蜻蛉州(あきつしま)
寒(なかな)い蝉
別のものの皮を着る
私はひとり見ていた
似ている人を
似ている背を
気まぐれに答えを探す
似た約束を口にする
拗(ねじ)けて押し遣る私そのもの
私は寄せ付けなかった私を
私は寄せ付けなかった誰一人
私は見た貴方を
私は見た貴方を
あまりに
突き付けて
ひとり
愛されたかった

陶然として
いちおう
整える襟
私はひとり立っていた
遠く離れて広やかな
棄てて忘れて美(うるわ)しく
飽き飽きするほどのこの広大無辺
隙間を過(よ)ぎる歳月(としつき)
私は望んだ進んで犯す過(あやま)ちを貴方に
私は望まなかった掲げる灯火である私を
貴方は望んだ私に
身を寄せる岸を
次第に消える燼余
私は見ていなければならなかった私を
貴方は見ていた私を
冷たい灰
違(たが)える流れ
のちに
愛されたかった

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