信《降龙乐章》
木立を抜け
其処だけに光が集約し
私は沼の淵にしゃがみ
指の背で
水面を愛撫する
消え入りそうな波紋が
それでも広がって広がって
かそけき高揚が広がって広がって
向こう岸にいる
あなたに届かない
としたら
向こう岸にあなたがいて
小石を水面にひとつ
私達は幾つもの訳を
体に詰め込んで
岸辺に立つ
無為に
水の上に輪を作り
返事の要らない便り
送り主のいない手紙
認(したた)めることのない文字の羅列
徒労を封印しては宛て先不明で返って来る
黙り込んで
其処にだけ光が集約している沼
私はしゃがみ
指の背で
虚しく
2005年