Chris Botti (trumpet) "Lisa"
座り込んで
くるぶしに手をやれば
摩れた畳の拉げた列がさびしい
貌(かたち)の崩れた暮らしが連なる暦の上に秋風が吹き
わたし
さっぱりして
きっぱりして
せいせいして
絶望している脳裏
空は青くなくていい
飛べない鳥も鳥
切符は片道がいい
恋は純がいい
わたし
成熟して
散乱して図らずも
絶望して灼熱の砂
軒下に逃れる通り雨
接(は)ぎ合わせたこころが晴れたら
低い音域しか愛せない不具な傾きで
日傘を差す
道行く人の問いかけに素気無(すげな)く口を閉ざし
わたし
頑なで
壁の時計は止まったまま
カーテンはピカソのブルー
星のない夜
夢は見ない
わたし
一人舞台
皮肉な結末
ト書きは心中(しんちゅう)
置き去りにした野末(のずえ)
こそばゆくって
おかしくって
サンドバッグ
2007年冬
-