Once Upon A Summertime
変わらない貴方
揺るがないこころ
一定の角度を保ち続ける視線
あの日二人は橋の上に居て
滲むように雨が降っていた
傘の下の短いドラマ
貴方の親指の爪
私の小指の関節に触れ
貴方が私の領域にかすかに触れ
呼吸のリズムが取れなくて
私が望んだことと
貴方の発した言葉
それぞれの時を経て
洒落たカフェ
不似合いな貴方
変わらない涼やかな眼差し
破綻のないこころ
選び抜かれた傷跡を残さない言葉
呼び出した私は
ひどく可逆的な衝動に駆られて
じゃあと歩を進めた後
踵(きびす)を返して
貴方の背中を追った
詫びなければならない恋を
繰り返して
私は年を取った
雨は今日も降って
雨の歌を口ずさむ
外は細い雨 雨
無機質なクラッシック喫茶
向かい合って聴いたバッハ
貴方は目を閉じ
私は貴方を見つめた
貴方は時に溶け込み
私は時を揺さぶった
貴方は手にしたものを優しく守り
私は更なるものを貴方の中に
探そうとした
雨は今日も降って
雨の歌を口ずさむ
2005年10月30日日曜日15:26:57