五輪真弓 想い出を捨てて
白い月明かりの中うつむいて歩く
とぼとぼ歩く
踏み締めた雪の下から
ふつふつと湧き上がる
これはなんだ
怒り憎悪殺意
ああ、あらぬ方向に傾いて
否定、否定、その想い
深く帽子をかぶり
項垂れ靴を投げ出して歩く
しっくり馴染んで居心地がよい
満月に近い白い月
奇しくも滾(たぎ)る血
狼女だったことがあったっけ
月よお前を食べちゃうぞ
忘れられた者のように
肩を落としゆっくり歩く
夜道に此の頃恋してる
行き倒れるまで共にいたい
扇情的な白い月
お前に此の頃ぞっこんだ
多情な老女路上にて死す
街路に沿って
鼠色の裸木が蒼い空を
突き刺す
そこからぱらぱら零れ落ちる
痛快な寂しさよ
ああ と唇を開いて
それきりにする独白
お前は知るだろうか
感傷的な白い月
あそこの角で分かれよう
2004.12.27.Monday23:48