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涸れた倦み

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    2 週間前

涸れた倦み

2011年1月7日金曜日

再生 幻想の薄布

時計・・・五輪真弓

出かけていく
遠い街へ
目的は有って無い
辿り着いた地は何処も門を閉ざしていた


帰途に着く旅行鞄の中にかろうじて詰めたものは
無言の思い出やフィルムに残った数枚の写真といった
性懲りも無いセンチメンタリズム
欲しい何か
求めていた何かを
この手に掴みこの鞄に詰めたことは無い


人は帰途に着く
自分のカタチに窪んだ場所がひっそり待つ
じめじめとした初夏の軒下の息苦しさをくぐり
終日開けなかった真実を語るときめきの口唇が
従順の食卓に着く
テーブルは乱雑で
上手く積み重ねられなかった年月が
ついた肘に纏わり
他の自由など無いように指を組み顎を乗せる
うつろな目に配置された家族の光景は灯りの下に砕けて
今は無い


テーブルクロスを引き剥がしたのは誰
宙を舞う幸福という幻想の薄布
安寧を求めながら
心を閉ざしていたのは誰
しどけなく散らばった空席
もう片付けなければ
割れた茶碗をゴミ箱に移し
へばりついた愛着を引き剥がし
失われた場所に封印をして


朝には出かけよう
生きるというラインに立とう
意味などない
得るものなど無い
ただ息を吸って吐くだけの繰り返し
それでいいと思ってしまえばそれだけでもないじゃないか
庭の草木は青々として
隣には言葉は交わさなくても人がいる
お早うくらいは言える
運河沿いの道を自転車で走って
そのまま海も渡ってしまおうか

2006年9月