夜更けて一人の手
誰にも触れないゆびは
冴えて鋭い
二度と触れさせない
二度と触れたくない
二度と触れない
みすぼらしい傷をなぞらせない
古びた枕の下のいじけた夢
ざんげをしてほっとしたりしない
ざんげをして許しを乞わない
噛み合わない春に背を向け
淡々と 脹物(はれもの)を抱く
満月の街道沿いに
死に別れた人
落ちる桜の雪
ついて行く青い影
私はいらない ノーベル賞 在米国連 私は信じない 見えないウイルス 熱しても死なない細菌 精神の病 歴史の全て 海には行かないで 魚が泳ぐんだから 山には登らないで 動物が住むんだから 空飛ぶものは皆捨てて 鳥が飛び虫が飛びたいんだから じゃあ人は? 平らな所を歩けばいいんじゃないの? 車には乗るけど 歩いてるのは私と子供達だけ だから貴方は知らない この道沿いに在ったものと無かったもの