戦争は知らない
名を呼ぶと風が吹く
うしろを振り向けない
引き合う真っ直ぐの張り詰めた糸
躊躇わずに前に進む
小雨が降るように言葉がわたしに降った日
切れ切れのぼんやりした記憶
食器を投げ出し
捨てていいわ
と言えば
階段を見上げ蹲る人を想像(おも)うこともなかった
口を噤んで
仕舞い込んで
笑顔を絶やさず
ひとり卑怯でありたくない漂流
タヤスイコト
モウスグアエルと言おうと思った
文字の上に恐怖を乗せた権威者の固執
法の支配下人殺しは正当化される
安っぽい感傷に慣れ
自己愛に狎(な)れ
食器を飾る
わたしを投げ出し
捨てていいわ
と言えば
命を奪われた人の恐怖を想像(おも)うこともなかった
20:57 2010/08/08 日曜日
-