西島三重子 一瞬の夏
丸太が浮かび
魚(うお)が白い腹を見せる
見知らぬ街の見慣れた疏水(そすい)
短い夜が始まり
いつの間に夏が往き
見せかけの家の見捨てた壁
痞(つか)えた息が淀む
君のいない昼食に
片肘付いて
みじめな空腹をコップに入れて呑み込む
手付かずの布
束ねた糸
裂いて紡ぐ我が衣
埃もなく貧しい
逃げ帰る君の背
約(つづま)やかな通路
損なわれた爪
枯れた野の摘み草
20:11 2010/08/28 土曜日
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