西島三重子 かげろう坂
似通う人に逢ったことはありません
似通う日々を送っています
似通う道に似通う花が咲く季節です
さくらが咲いた
と
聞きました
昨日は近くの神社で歌声が流れていました
あなたがいたから聞こえた音です
あなたがいたから其の歌を口ずさみもしました
あなたがいないからわたしの窓辺を避けるように流れて消えます
思い出は重い荷物です
さくらの花を見たくはありません
さくらの花を見てはいけません
さくらの花が早く散りますように
明日は雨が
明後日は風が
さくらの花を散らせますように
あの人のいないわたしがひとりさくらの花を見て
明日を思ってはいけません
あなたのことだけを思って
移り変わる季節とともに色褪せる
「人の春」のように
あなたを忘れたりしてはいけません
あなたの途切れた思いだけに拘泥し
あなたの美名を穢さぬよう
未亡人をもう死んだ人と読んで頂きます
にがわらいをしてる?
にがわらいもできない人でした
あなたも愛を知りませんでした
けれどあなたはいちばん愛することのできる人でした
わたしに愛することを教えてくれたのはあなたです
18:54 2010/04/05 月曜日
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