時計・・・五輪真弓
あざやかな記し
寄る辺なく暮れる日々
朝(あした)も夕べも
影と形が貴方と一緒にありますように
レコードに書き留めた音
ほかへ逸れることもなく針が径を辿る
初めから終わりまで
影と形が貴方と重なっていますように
わずかな時を咲く五弁の花
向こう岸に渡ろうとしては挫(くじ)けた
春の日も秋の夜も
影と形が貴方と寄り添ってありますように
没するヒトと堕ちる悦楽(よろこび)
球形の野に実もなくわだかまりもなく
風吹く街に雨降る路に
影と形が貴方と共に打たれ共に朽ち果てますように
不一と書いては言い尽くせない思いを呑み込む
迷いから醒めると表紙が色褪せて振り返らず
夏の陽に冬の淡雪に
影と形がつらく震え悲しく捩(よじ)れる
21:26 2011/03/11金曜日
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