残り火 五輪真弓
あるべきものがないから・・と
草屋(そうおく)に青空
足を伸ばして床
然うあるべきものは然うあり
其処にあるべきものはある
折って千切って残る傷
ひらひらと燃え上がる紙片
あるべきものが其処に無く
然うあるべきものが無い
遠い彼方へ
いなかったわたし
無かったわたしのこころ
あるべきものはあるべきものでさえなく
然うあるべきものが然うでさえない
私書箱に投函する認(したた)めたいのち
夕方になって降る雨が砂に滲み
いのちの藻に染みて
19:29 2010/09/01 水曜日
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