一瞬の夏
夜半の風が剥き出しの膚を冷やす
無灯火で歩む秋(とき)の径は
月影に散らばり乱れ
むごたらしい夏草の荒れ野を通って此処にいるのか
記憶の轍(わだち)は切れ切れで
畠でトマトが熟す
肥えた南瓜の蔓(つる)が地を這う
あの午後のピューレは肉汁を染めているのに
思い出せない季節の色
今年も出さなかった暑中見舞いが
箪笥の奥の畳んだままのワンピースが
炎の糸を縒る
睦まじい白鳥(しらとり)を見上げては
行く先を追った海辺
求めない
流れ着く岸辺を探さない
予め無辺のこの椅子
考え込むことも無く
わだかまりも無く
私はひとかどの燃え殻になる
窓辺に突っ立つだけの固体の拙(つたな)さ
2008年9月22日月曜日10:07:11
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