Une vie d'amour(愛の生活) - Mireille Mathieu & C. Aznavour
私の体は一つ一つの細胞が鋼で出来ており
その細胞はそこでしか生きることが出来ない
隣り合うもの同士施錠してあり
一つ一つの細胞は勝手に動くことを全体の指令として許されておらず
又個々の意思として其処に棲息し続けることを享受することは好ましいことだった
痺れるような感覚であり
心的な倒錯に加担する者のみ知る
貫くような恍惚があった
私は或る日言葉を得た
其のことのために私の細胞はますます団結して城壁を守り
私の砦は私が私であることを其の頑迷さによって死守しようとした
決して他に移動しないこと
それが同士の契りであり鉄則である
内なる感情はひ弱で動じやすいように見えたが
たわんでもたわんでも元に戻ることが至極当然で
他の位置を描くことを知らなければ何処でどんなことが起きてそれが身に降りかかっても
必ず着地点は同一で波も風も一過性でそれによってしなった記憶だけが止まる
そうやって溜まった記憶を言葉に乗せようとする時息苦しさに身悶えした
私は私を並べ替えられない
一つずつ細胞の鍵を外そう
一つ一つ緩やかにそよぐ風のように
ゆらゆら揺れる小船のように
私はけれど恥しくて情けなくて
いじけた指はもどかしくひねた鍵はそっぽを向く
言葉が記憶の海を渡れるよう
幾つものしこりを揉み解(ほぐ)して
堅い鍵を外そう
2006年6月
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