ジリオラ・チンクエッティ 恋よまわれ Gira l'amore
指を切った
赤い血がまあるくふくらみ
シンクに落ちて滲む
押し込まれた健気な赤い充実
籠の中のトマトが燃え尽き
私は疲れて
ちっぽけな常日頃が憎らしい
キッチンの片隅でじゃがいもの皮を剥くだけの断罪
胸の痛みさえ与えられない日暮れには
すすり泣きは紙布巾に包んで使い捨て
実(まこと)しやかな屋根の修繕を繰り返す
肩の空ろ
言いそびれました
私はあなたの常夜灯でした
分かれの文字は色を失くし
端書きばかりが妄(みだ)りに長い
不具な思いは散らばり縺れ
純潔が白い布地を抱いて走る夏
私は疲れて
萎れた疵が口惜しい
2008年8月2日 22時53分
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